SQLインジェクションとRailsでの対策

Rails

はじめに

SQLインジェクションは不適切に処理されたユーザー入力がデータベースクエリに直接組み込まれることで発生します。攻撃者はこの脆弱性を利用して、データベースに不正な命令を送り込むことができます。この操作によりデータベースから情報が盗まれたり、改ざんされたり、データベースが破壊される可能性があります。ここでは、そのような脆弱性を持つコードの例とRailsでの対策方法について見ていきます。

SQLインジェクションが発生する具体的なコード例

以下はRailsを使用したアプリケーションでSQLインジェクションが発生する可能性のあるコード例です。

User.where("username = '#{params[:username]}'")

この例では、ユーザーからの入力(params[:username])がそのままSQLクエリに埋め込まれています。これにより以下のような攻撃が可能になります。

攻撃例

攻撃者がparams[:username]に次のような値を送信することを想定します。

' OR '1'='1

この値を用いた場合、生成されるSQLクエリは以下のようになります。

SELECT * FROM users WHERE username = '' OR '1'='1'

このクエリは、username = '' という条件と '1'='1' という常に真となる条件が OR で結ばれています。'1'='1' は常に真を返すためこのクエリはデータベース内のすべてのユーザー情報を返すことになります。これにより機密情報が漏洩するリスクが生じます。

さらなる攻撃手法

SQLインジェクション攻撃はデータの盗み出しにとどまらず、データの改ざんや削除、さらにはデータベースサーバー自体の制御を奪うことも可能です。例えば、攻撃者が次のような値を注入することも考えられます。

'; DROP TABLE users; --

これによりクエリは以下のようになりusers テーブルが削除される可能性があります。

SELECT * FROM users WHERE username = ''; DROP TABLE users; --'

この例ではセミコロン (;) を使ってクエリを終了させ、新たな危険なSQL文を追加し、その後のSQL文がコメントとして無視されるようにしています。

RailsにおけるSQLインジェクションの対策

RailsにはSQLインジェクション攻撃を防ぐためにいくつかのセキュリティ機能があります。以下に主な対策方法と具体的なコード例を示します。

1. プレースホルダーを使用したクエリ

RailsではActiveRecordを使用することで自動的にSQLインジェクションを防ぐことができます。プレースホルダーを使用したクエリは、パラメータを安全にデータベースに渡すためのものです。以下に例を示します。

# 悪い例(直接文字列を組み込んだ場合)
User.where("username = '#{params[:username]}'")

# 良い例(プレースホルダーを使用した場合)
User.where("username = ?", params[:username])

このコードはプレースホルダー ? を使用しています。これにより、params[:username] の値においてクエリの実行時にパラメータが適切に処理され安全に扱われます。ユーザー入力が文字列の一部として組み込まれるのではなくデータベースによってパラメータとして処理されるため、SQLインジェクション攻撃を防ぐことができます。

2. ストロングパラメータの使用

Railsではコントローラーでストロングパラメータ(Strong Parameter)を使用することが推奨されています。これにより許可されたパラメータのみがモデルに渡されるため、SQLインジェクションのリスクが減少します

class UsersController < ApplicationController
  def create
    @user = User.new(user_params)
    if @user.save
      redirect_to @user
    else
      render :new
    end
  end

  private

  def user_params
    params.require(:user).permit(:username, :email, :password)
  end
end

3. サニタイズされたSQLクエリの実行

場合によっては直接SQLを実行する必要があるかもしれません。その場合は、sanitize_sql_arrayのようなヘルパーメソッドを使用してクエリを安全にすることができます。

query = sanitize_sql_array(["SELECT * FROM users WHERE username = ?", params[:username]])
results = ActiveRecord::Base.connection.execute(query)

まとめ

SQLインジェクションは不適切に処理されたユーザー入力がデータベースクエリに直接組み込まれることで発生するセキュリティ脆弱性であり、情報の盗難、データの改ざん、またはデータベースの破壊など深刻な影響を及ぼす可能性があります。攻撃者は単純な入力値を通じてデータベースにアクセスし、不正な操作を実行することが可能です。

Ruby on RailsにはSQLインジェクションを防ぐための複数のセキュリティ機能があります。これには、プレースホルダーを使用した安全なクエリの構築、ストロングパラメータを通じた入力の制限、特定のSQLヘルパーメソッドによるクエリのサニタイズなどが含まれます。これらの対策を適用することでアプリケーションはSQLインジェクション攻撃に対してより強固な防御を構築することが重要になります。

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